第2回地域SNS全国フォーラムレポート

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S-2-5 「地域SNS発情報のビジネス活用を考える~日産・カーウィングス/アクトビラとの連携事例」

 地域SNS上で送受信される地域情報は、今やPCや携帯以外の通信端末でも利用できるようになりつつある。このような状況から、地域における、マスを対象にしない情報受発信ニーズをビジネスに転化し地域経済を活性化する可能性が見えてきた。
地域情報化とそのビジネス活用の観点から、地域SNSとカーナビゲーションシステム、地域SNSとテレビの連携事例を交え、現在進行中の動きから持続可能なビジネスモデルに至るまで、活発な議論が行われた。


第2回地域SNS全国フォーラム in 横浜 2008.2.28~29 開催

==== セッション基本情報 ================================

日時:2月29日(金) 15時30分~17時(90分間)
会場:横浜開港記念会館9号室

コーディネーター:
 国際大学GLOCOM研究員 庄司 昌彦 氏

パネリスト:
 インフォミーム(株) 代表取締役 和崎 宏 氏

 日産自動車(株) プログラム・ダイレクターオフィス カーウイングス担当主任 小泉 雄一 氏

 NPO法人南房総IT推進協議会 副理事長 鈴木 聡明 氏
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 ■車とコミュニケーションができる時代、地域情報消費の可能性とは
 -日産カーウイングスと地域SNSの連携事例

 カーナビゲーションシステム「カーウイングス」は、カーナビに携帯電話を接続することで、最新の情報やリアルタイムな交通情報にアクセスすることができる車載機用システムだ。
 2006年、サービスが開始されたとき、地域情報の発信元は民間企業が運営している情報サイトや投稿サイトなどが主だった。カーウイングスとして提供する情報はコンテンツプロバイダから情報を購入して配信するというモデルを採用していた。

小泉:     「カーウイングスで提供する地域観光情報などの情報提供元を探していて偶然見つけたのが庄司さんの地域SNS研究会のサイトでした。これはと思いすぐに連絡をとってお会いし、情報交換をする中で地域SNSの可能性を感じました。」

 さらにその後、千葉県南房総で地域SNSを運営する鈴木氏にコンタクトをとり、地域SNSとカーナビゲーションシステムの連携が始まった。

小泉:     「当時一番問題になったのは位置情報です。カーナビゲーションシステムが理解できる位置情報というのは実は住所のテキストではなく、緯度経度の数字。地域SNSで入力され発信される情報にはそれがついていませんでした。しかし、今現在、元の情報にも緯度経度データが付加される傾向にあります。」


車載機における情報受信スタイルはPCなどのそれと大きく異なるため、相応に加工しなくてはならない。Web2.0時代、情報の構造化が進み、エージェントシステムによる自動解析/配信ができるようになってきた現在、その可能性はさらに広がっている。


> 日産カーウイングス : http://drive.nissan-carwings.com/WEB/index.htm
> 南房総ソーシャルネットワーキングサイト「房州わんだぁらんど」 : http://wandara.net/



■車の総合環境情報が集約され、地域情報化に資する可能性
 -千葉県南房総の事例から

 地域SNSとカーナビゲーションシステム(日産カーウイングス)の初めての連携が行われた千葉県南房総地域の「房州わんだぁらんど」。 その運営に携わる鈴木氏は、以前から車載機による情報の受発信システムに可能性を感じていたと語る。

鈴木:     「千葉県の南房総というところで土着民のようにずっと暮らしています。そして地域活性化策を考えているのですが、その中でも特定の場所や地点をベースにしたアプリケーションが何か作れないかという漠然とした思いがありました。
 車に関して言えば、それをインターネットの情報端末と捉え、速度情報や位置情報などの車の総合環境情報ともよぶべきデータをリアルタイムで送信し、それを元にした情報配信すごい可能性があると考えていました。 渋滞情報は勿論、ワイパーの稼動やその速度による天候状況の把握であるとか、信号機の応変な制御などが可能になります。

地域情報においても、走行中に右折xxメートル先にこういうイベントが開催中、などのお知らせができるようになっていく。」

そんなことを考えている中、小泉氏からカーウイングスとの連携について持ちかけられたという。現在も継続して相互の情報受発信のあり方を模索しつつ、地域情報をカーナビで提供するための情報源として、地域SNSが持つ潜在力を滲ませた。


> NPO法人南房総IT推進協議会 : http://www.mbit.or.jp/
> 房州わんだぁらんど : http://wandara.net/



■次世代テレビを通じた情報の地産地消
 -VODサービス「アクトビラ」と地域SNSの連携事例

 2011年、テレビのアナログ放送が停波し、地上波デジタル放送に切り替わる。 この画期に地域経済活性化の観点から考える、地域SNSとテレビの連携の可能性。 地デジ対応テレビによるビデオオンデマンドサービス「アクトビラ」の事例から、地域SNS基盤「OpenSNP」の開発を行うインフォミーム株式会社和崎氏が語った。

和崎:     「今現在日本の家庭にはテレビが1億台あるといわれています。2011年、アナログ放送の停止に伴って全てのテレビが入れ替わる、とは実際は考えにくいですが、今後3年のうち、半分くらい、つまり5000万台は買い換えられると予想します。
 さらに今後10年後、テレビは全て地上波デジタル、そしてインターネットに繋がっている、さらに、その家庭の郵便番号を覚えている、この3つがポイントです。
 そんな状況で、仮に「地域情報」というボタンが(アクトビラのメニューなどに)あるとします。それを押すと、テレビに登録されている郵便番号からサーバーを自動で選択し、地域情報が配信される、というような展開が考えられます。」

 「足りないのはその地域における「情報」です。 そして地域情報をいかに信頼できる情報として整理して出すか、ということが大切になってきます。 先ほど述べたテレビを取り巻く状況の変化と併せてこれが達成されれば、例えば住んでいる町の魚屋さんが魚を捌く模様をテレビで配信し、タイムセールを告知するような、いわゆる「マイクロアド」が可能になります。このように、地域の住民が地域の情報から取り残されている現状を変える可能性があると思います。」

 「この仕組みを一つの地域SNSが展開しようとしても投資を回収できない。運営者同士でコンソーシアムを作り、地域間で連携をしつつシステムを構築していこうと呼びかけているところです。」

 儲けてやろうと思っても地域SNSは続かない、と語る和崎氏。 継続的に地域活性化に向け利益配分を行い、相互に助けあう。 綺麗ごとかもしれないが、と前置きしつつ、みんなが笑顔になる情報の地産地消を実現したいと力強く語った。


> アクトビラ : http://actvila.jp/



■情報の正確さ、編集、技術的課題
 …ディスカッションから展開する多様な端末による地域SNSの次の一手とは。

3名のプレゼンが終わった後、盛況の会場から次々と質問が飛んだ。

会場:     地域の口コミ情報の著作権に関する考え方や対応については?

鈴木:     「カーナビに関しての今の事例を言うと、現状地域SNSで投稿した情報がカーナビで表示される可能性があることを知っているユーザーと知らないユーザーが存在します。 このため、カーナビに表示して欲しいと意思表示ができる専用のコミュニティを作り、そこで情報をシェアし、意識付けを行っています。」

和崎:     「個人的な意見ですが、情報を出した後で著作権について主張する人の情報は最初から出さない、という立ち居地です。 コミュニティ全体の利益として、公開することが前提で情報を出す、という考え方を持っています。」

小泉:     「私も個人的な意見を言わせてもらいます。 昔はコンテンツ、すなわち著作権に対して対価を支払っていました。当然精度品質を求めます。 一方、SNSは人付き合いで成り立っています。情報提供側の動機が(報酬を求めるというよりも)情報を利用する人が楽しんで欲しい、という思いで以って出しているという思いが共有されていれば、多少情報が間違っていても怒らないという了解が生まれる。 またそういった啓蒙をしていかないと伸びないと思います。」

庄司:     「自動車会社としてはいい加減な情報は出せない、と仰っていたと記憶しているんですが?(笑)」

小泉:     「程度問題です(笑)。 公序良俗に反するものや明らかに人に迷惑をかけるものに関しては当然論外です。 しかし、信頼の置けるSNSであるならば、程度の差こそあれ、多少の間違いがあっても許しあえる良い関係が築ける可能性があると考えています。」

会場:    
 ・地域SNSに溜まるコンテンツと、カーナビやテレビなどから求められるコンテンツは異なるのではないか
 ・望ましい地域SNSのサイズをどう考えているか

鈴木:     「求める情報の精度の問題。 ポータルで提供されるような、ある程度コストのかかっている精度の高い情報と、仲間内で集めていくマニアックな情報との住み分けをしていく必要性を感じています。」

小泉:     「従来のように観光情報配信サービスとして地域SNSを捉えると、品質や(情報)量を求めたくなるものです。 (車載機に関して)これにはITS(Intelligent Transport Systems)の膨大なコストがかかる。 しかし、振り返ってみて何を僕はやりたかったのかと考えてみると、和崎さんの言うようにコミュニティなんです。
 例えばちょっと昔だったら旅行先で仲居さんなんかと交流してその土地のオススメを聞く。 そこが良いところだったらまたリピートに繋がる。 社会がIT化しても本質的には変わらないと考えています。 ですので量や質が地域のもてなしの機運を反映する、なければないで、そういうことだということです。 その土地に即した適正なサイズというものも特にないと考えています。」

和崎:     「サイトとして運営するには、数千では少ないが数十万では多い、という感覚です。  本来地域SNSは、潤沢なソーシャルキャピタルを生み出す機関です。その中での情報は人の縁で取りに行くもの。 例えば信頼関係があるからクチコミ情報が活きる、ということです。
 一方で、ユーザー側が情報に接しやすいような仕組み、あるいはユーザー側が本当に必要な情報を引き出すことができる仕組みに関しては、地域SNSの開発側として試行錯誤をしています。」

会場:    
 ・アクトビラに関して、各テレビ間の仕様の差異、互換性の課題に関して
 ・PCなどのキーボードを持たないインターフェースにおける課題に関して
意見を聞きたい。

和崎:     「アクトビラ側と連携をしつつアプリケーションとしての地域SNSの表示の仕方を検討している段階です。 ただ、現状できないことを積み上げていくよりも、どうすれば考えていることが可能になるのかについて検討しつつ、技術者が良い料理をしてくれると考えています。」

庄司:     「多少表示が崩れても良い、というインターネット的価値観と、信頼できる情報を流す、という放送局的価値観がどう融合していくのか、ということは一つの論点になると思いますね。」

庄司:     「情報の質に関して言うと、地域SNSはサイト内の編集された情報を一つ持ったほうが良いと考えています。 サイト内でこういうことが話題になっている、などフィルターをかけ、整形して皆で共有するメディアを持つ、ということです。これはカーナビやテレビなどに対しても親和性が高い話だと思うのですが。」

和崎:     「まず地域の情報が出てきて、編集される骨組みを作る必要があります。 今は地デジのテレビ(による骨組みが)が見えやすいため、何かやってみようという動きになっています。 これから様々な端末でやっていくことになるでしょう。」

庄司:     「ユーザーが、カーナビや地デジに見せたいと思って情報を出すのか、他の楽しみ方があったついでに情報が出てくるのかという違いがあると思います。
副次的に情報が出てきたとしても、それを消費した他の人からのフィードバックが返ってくるとやはり本人はうれしい。 いかに投稿者にフィードバックするかということについてお聞きしたい。」


鈴木:     「現状ではカーナビから直接レスポンスを(提供者に対して)返すシーンは考えにくい。ただ、先ほどの小泉さんの話のように、現地でのコミュニケーションが生まれれば、それがフィードバックになり得るのではないかと考えています。また、消費者が消費する場所に移動する、という行為そのものが情報の地産地消に繋がります。」


小泉:     「車向けに地域情報を編集する、と考えると、これは事業としてペイしないのではないかと思っています。編集するならばそれに対する見返りは何かを考えつつ、現状はBtoBでサイトとの契約を結んだほうが早い。その中でフィードバック機能が要請されればつけても良い、という姿勢です。
一方でアクトビラと同様、位置情報や、つけっぱなしで情報を送受信していることが集約されてコンテンツになったり価値を生む場合、逆にフィードバックはないほうが良いのではないかと思います。」


立ち見が出る満員の会場と、登壇者と近い会場レイアウトから、終始熱気を伴ったセッション。それだけ注目度があるトピックとして、PCや携帯とは別の切り口で拓かれる、地域SNSの新たな試みとその将来に注目していきたい。


記事・文 うめ + ハマっち!プレス編集部



March 7, 2008 - 管理人

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