第2回地域SNS全国フォーラムレポート

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S-2-3 「融合するコミュニティの基盤~地域SNSと地域通貨の未来」

 多様な構造的歪みに悩む現代社会の中で、問題解決への一筋の光明を灯すと期待される「地域通貨」と「地域SNS」。様々な課題を抱える中、限界説も取りざたされている。一方、地域プラットホームとしての役割を担うために、2つのツールの融合が進んでいる。「地域SNS」と「地域通貨」による融合の効果と期待、及び今後の展開を探る最先端・最前線の実践者、研究者によるセッションをレポートする。

第2回地域SNS全国フォーラム in 横浜 2008.2.28~29 開催

==== セッション基本情報 ================================

日時:2月29日(金) 13時30分~15時(90分間)
会場:横浜開港記念会館9号室

コーディネーター:
 兵庫県立大学環境人間学部 教授 岡田 真美子氏

パネリスト:
 地域通貨全リスト作者 徳留 佳之 氏
 ピーナッツクラブ(西千葉「ピーナッツ」)世話役 海保 眞 氏
 地域SNS「ひょこむ」副塾長・「ひょこむモール」支配人 平山 裕康 氏======================================================


■地域通貨とSNSの出合い

 「ピーナッツクラブ西千葉」の世話人である海保氏が、経営する美容室と妻の歯科医院で地域通貨を導入したのは9年前のこと。 「(設計・運営者である)村山和彦さんから教わったことを一人で始めた。 あの時は、実際の面、ある面だけ分かっていた。 あとはひたすら頑張って過ごしてきた」と当時を振り返る。 現在は、美容室・歯科医院の経営に加え、ピーナッツクラブの運営費を生み出すために始めたオリジナル化粧品の販売と、街の活性化を考える中で立ち上げた福祉サービス業も行う。 団体を支援する補助金はあるが、通貨の運営は村山氏個人の資金、SNSの運営も自己資金だ。行政から補助金を受けたことはない。 「お店だって立ち上げから3~5年は全力で走る。 地域通貨だってそれと同じです」と笑う。




  兵庫の地域SNS「ひょこむ」副塾長で「ひょこむモール」支配人の平山裕康氏のパソコンとの付き合いは長い。 「1996年頃からおたくをしています(笑)」99年には中国をテーマとした掲示板とチャット機能を備えたコミュニティサイトを運営していた。 2年前、mixiに出合いSNSを知った。 「ひょこむ」中に地域通貨「ひょこぽ」を実装したのは昨年のこと。 「地域SNSと地域通貨の融合で、地域はもっとかわる」という意見の持ち主だ。


 

 

 コーディネーターの岡田氏は、日本初のIT地域通貨「千姫」を運営するNPO法人千姫プロジェクト理事長でもある。 SNSとの出会いは2年前、やはりmixiからだった。 地域通貨に関する国際フォーラムでのやりとりを、mixi内に作ったコミュニティで行うことを通じ、SNSの可能性に惹かれた。 大学のゼミでもSNSを活用、クローズドコミュニティを作り、ゼミ生の提出物UPにも役立っている。




西千葉コミュニティサイト「あみっぴぃ」
ピーナッツクラブ西千葉(地域通貨「ピーナッツ」)
「ひょこむ」(地域通貨「ひょこぽ」、モール「ひょこむモール」を含む)
NPO法人千姫プロジェクト




■そもそも「地域通貨」って何?

 岡田氏が、賑わう会場に問いかけた。「みなさん地域通貨を使っていますか?」 結果は「名前は聞いたことがある」という人が大多数、実際に使っている人はごく僅かであった。 一体、地域通貨とは何であり、その現状はどうなっているのだろうか?

 2002年から全国の地域通貨の調査・研究を行い「地域通貨全リスト」として発信し続けている徳留義之氏は、地域通貨について「コミュニティ・ボランティア・地域経済などの活性化のために、一定の地域やコミュニティにおいて自主的に発行するお金」と解説する。その目的は「SNSと同じく『ソーシャルキャピタル(社会資本)の創出』」であり、ゆえに「地域通貨とSNSの融合は自然なこと。しかし…」と続ける 「地域通貨のパラドックス(両義性)がある」


 ・地域通貨はお金のようであってお金でない。
 ・どこでも何にでも使えると便利なのに、限られた場所・モノでしか使えない。
 ・市民主導が望ましいのに、行政の援助がないと成り立ちにくい。
 ・関係性を作るツールなのに、関係が深まると必要性が弱まる。
 ・性善説に基づくため規模が大きくなるとフリーライダーが出やすい。

 地域通貨をテーマとしたNPOが次々と解散、限界説が取り立たされてもいる。それについてはこう反論する。
 「ブームは去ってからが本番。 新地域通貨も少なからず生まれており、継続的成功例もある。 先進国では「補完通貨」と呼ばれ、コミュニティ&地域経済の活性化を期待されている地域通貨だが、途上国では「代替通貨」として、インフレ時に価値を維持するセーフティネットとしての役割を果たしている。 先進国においてもインフレ時には威力を発揮する可能性はある」
 「ソーシャルキャピタルの増大は、社会的コストの低下を意味する。信頼性の広がりが、効率性を高め、経済的コストの低下へと繋がる図式だ」。

徳留氏は「地域通貨成功の条件」として
 1.明確なテーマ・ビジョンの共有
 2.魅力的な人・リーダーシップ
 3.関係性・場づくり+地域のオリジナリティ・アイデア・遊び心
の3つを挙げ、発表を締めくくった。

地域通貨全リスト




■続けることが力を生む

 地域通貨の日本における先駆者は、どんな考えの下、運営を続けているのだろうか?

 「ピーナッツクラブ西千葉」の世話人として地域通貨に関わってきた海保氏は、パソコンを介したコミュニケーションへと足をふみいれるきっかけとなった虎岩氏との出会いをこう説明する。「『千葉大を卒業した虎岩という若者が、NPO法人を設立したが事務所がない』と聞き、デイサービスの2階を貸しました」。 賃貸料は地域通貨「50,000ピーナッツ」とし、彼らのピーナッツクラブカードには「マイナス50,000」と記された。 すると支払いのため、学生たちは地域の「第三土曜市」を積極的に手伝うようになった。虎岩氏が設立したトライワープ、千葉大学、そして地域のネットワークが回り始めた。そのつながりは、代が変わっても引き継がれている。 
 「気持ちを豊かに生きたい」と海保氏は言う。
 「お金でできないこと、お金をいかすことができるのがピーナッツ」
 「アミーゴと言う回数が増えればいいと思って続けてきた活動が、大きな関係性を生んだ」。
 地域通貨10年目の節目の今、「より先に行ける」という確信を抱いている。



■地域通貨と電子決済、SNSとの連携

 地域SNS「ひょこむ」に、SNS通貨「ひょこぽ」が実装されたのは、昨年秋、「第1回地域SNS全国フォーラム」の頃である。それ以来、利用者は順調に増えている。
 「昨年末頃から、ポイントのやり取りが増えた。 それに伴って、コミュニケーションの量も増え、ブログへのレスポンスも増加している」
 「お金というものが、人間関係だったり、色々なものを喪失していくきっかけになっている。 しかし地域通貨、SNS内で流通するポイントは、一人一人をより深く結びつけていくものになっている。 それがだんだんと実証されている」
 「ひょこぽの実装までには、それが本当に役立つのか?SNSが果たそうとしている地域の人と人との関係の強化、そこからうまれる活動の強化に役立つのか?など様々な議論があった。 今は、新しく生まれてくる文化、それを育むきっかけになればと思っている」。

 4月には「ひょこむモール」がグランドオープンする。
 「東京の荒川にある老舗の豆腐店の親子が、先行きが不安だと、首つり自殺をしたニュースを見た時、人ごとではないと思った」 地域の商店街にはシャッター通り化しているところが多い。
 「我々の地域にも、自ら命を絶つ人がいる。なぜ、そういった気持ちになるのか?お金のこともあるだろうが、その先に希望が見えないことが一番大きな理由ではないか?」
 「地域SNSの中で魅力的だと思ったのは、たとえ悩みを抱えていても、その先に希望が見出せるということだった。 人間関係が希薄になっていく中で、そういった現状をなんとかしたかった」
 通常のネット上のショッピングモール・ポイントは、キャッシュバック的だ。 「それでは、家電量販店と同じ。 なんとか地域SNSの利点を活かしたモールを作りたかった。だから、商品を売らなくても、エントリーできることにしたんです」
 「ボランティアやNPO活動も、モールに登録できる」 
 法定通貨では0円とカウントされるプライスレスなやり取りも、ひょこぽなら数字に表わすことができる。 「事業や活動のアピールの場としても使えるモールが、ひょこむモールです」

 西千葉のSNS「あみっぴぃ」からも、地域通貨「ピーナッツ」の決済は可能だ。 「ひょこぽ」は「ひょこむ」内にシステムを実装しているが、「ピーナッツ」と「あみっぴぃ」は別々のシステムをリンクした方式である。 もともと紙幣は発行せず、通帳(クラブカード)で決済を行ってきたが、現在はパソコンや携帯からの決済も可能になった。 海保氏は電子決済サービス開始のいきさつをこう説明する。 「便利なものが出てくると、誰かが『使いたい』と言い出す。 よく使っているが、面倒臭くもある。 自分自身では、今も紙が一番だと思う」。


 「海保さんは、紙がいいという。電子決済の方が安心という人もいる」と岡田氏が結んだ。



■地域通貨の未来と、新たなリスク

 地域SNSと地域通貨の融合と、それがもたらす可能性に注目が集まるようになってからはまだ日が浅い。今後、先駆者たちはこの2つの道具を、どう使っていくつもりなのだろうか?

 海保氏は「ピーナッツの始まりから10年がたった。 10年たつと、会って、顔を合わせてということが出来にくくなるのも事実。 それを見えるようにする。 そのためにSNSが必要」と言う。
 まずは現実の地域の活動があり、それを支える地域通貨があり、さらにそれを支援するSNSがあると説明する。「あと10年たつとどうなっているのかな?若者が私たちの活動を引き継いで、やっていくのかな?」

 平山氏は「Lドア、Mファンド…少し前に起こった事件で、ITというと悪いイメージがあった。 地域ITで、新たなコンピュータの良さを実感してもらえるのでは?と思っている。 そこに地域通貨が加わることで、お金では表せないプライスレスな部分をしっかり流通させることができる。 地域SNSと地域通貨の融合によって、よりよい日本の可能性に希望が見えるのでは?」

 SNSは初心者、という徳富氏は警鐘を鳴らす。「1つ気をつけておきたいのは、Suica、PASMO、企業間取引による企業通貨などの電子マネー。 今、それが膨大なものになりつつある。SNSではじめてポイントのやりとりの話を聞いた時、企業のポイント制度をイメージして、それに繋がるものを感じていた。今後そういうことを考えるところも出てくるだろう。 その時、地域通貨はどうなるのか?安易に相互乗り入れを行うと法定通貨に飲み込まれる恐れがあるのではないか?地域通貨は、経済動機性とは違うところで、動機付けされるもの。 それが誤解される可能性がある」





 

■自治体、地域金融機関と地域通貨

 セッションの締めくくりは、会場との質疑応答。
 「地域SNSや地域通貨の運営母体に興味がある」という参加者の質問は、「地域金融機関は各地にある。 そういったところが何か役割を追っていくことになるのか?補助金がないと厳しいというところも多く、一方で市民主導であることが望ましいとされる。 その中で、自治体・地域金融機関が役割として分担できることはないのか?」というものであった。

 それに対し、今回は聴衆の一人として来場していた「ピーナッツ」の運営者・村山氏が答えた。
 「例としては、まずJマネー。 三重県庁、三重銀行、イオンが一緒に取り組んだものだ。 山形県東置賜郡高畠町の『ニャン券』は、信用金庫に商工会議所が預託をして、信用金庫が発券している。 イオンが利益のために行うのは、いいことであり、商店街が利益のために行うのも同じ。 ある目的のために信用金庫が入ることは可能だ。 難しいのは、(参加する組織の)目的が、様々なことだ。
 新潟県の三条市では、市が印刷し、NPOに市が予算をつけ預託している。 この場合、首長の意思が大きく、市長がかわったらダメになる可能性もある。 元々、市の信用金庫の預託率が悪い地域で、市内には4分の1しかなかった。 資金を循環するために、市が発行した。 行政に意志がなければ、やらないほうがいいだろう」

 岡田氏が「行政の関わりという点では信用づけという意味もある」と補足した。

 「地域通貨を使う私自身が、生き生きと暮らしている。 このエネルギーを人づくりに回して、新しい世代にバトンタッチしていきたい」という海保氏、「今日はSNSのヘビーユーザーとしてこの場に立った。 次はひょこむポインターとして、それを利用して街を変えたという結果を持ってこの場に立ちたい」という平山氏。 挑戦はこれからも続く。


記事・文 とも + ハマっち!プレス編集部


March 2, 2008 - 管理人

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