第2回地域SNS全国フォーラムレポート

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S-1-2 「地域SNS+αのかたち ~まちを元気にする地域情報化プラットホームを展望する」

 午前中のメインセッションでは、地域SNSの現状を踏まえたうえでの「基調報告」や「論点整理」がメインとなったが、これを受けた形で行われた初日午後のセッションでは、「では、なぜ『地域情報化』を『SNS』という“閉じられた”場をベースに行うのか?」という根源的かつ素朴な問いをめぐっての議論が行われた。


第2回地域SNS全国フォーラム in 横浜 2008.2.28~29 開催

==== セッション基本情報 ================================

日時:2月28日(木)13時45分~15時30分(105分間)
会場:パシフィコ横浜 会議センター5階小ホール

コーディネーター:
 慶應義塾大 総合政策学部教授 國領 二郎 氏

パネリスト:
 日経メディアラボ 所長 坪田 知己 氏

 地域SNS「ふらっと」(河北新報社開設)運営担当 佐藤 和文 氏

 NPO法人 南房総IT推進協議会 副理事長 鈴木 聡明 氏

 地域SNS「ハマッち!」運営委員・ヨコハマ経済新聞 編集長 杉浦 裕樹 氏
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■対極、異色のメディアがセッション

 パネリスト4名のうち、坪田と佐藤の2人は“従来型マスメディア”の代表格ともいうべき新聞社の出身。 一方で鈴木と杉浦の2人は、それぞれ南房総と横浜での「地域おこし」活動に関わる中で地域SNSの運営に携わることになったという、ある意味で対極に位置するかのごとき2対2の組み合わせだ。 もっとも、「日経地域情報化大賞」の立役者である坪田はもとより、佐藤も「河北新報」という、苦境にあえぐ新聞業界でも目下最も難しい局面にある「地方紙」の社員という立場で「ふらっと」という地域SNSの運営担当者を務めるという、新聞の世界では異色の存在でもある。 セッションはまず、その佐藤による「ふらっと」の現状報告からスタートすることとなった。



■地元読者との双方向のコミュニケーションを実現するSNS「ふらっと」

 「新聞というのは紙媒体の中で最も“インターネット”的でないメディアだ」と、やや自虐的に語る佐藤は、同時に過去10年間の新聞社におけるネット事業を「アサヒ・コム型の、ようするにアメリカモデルを追いかけるスタイルに終始していた」と振り返る。 全国紙の場合はともかく、地元にネットユーザー自体が少ない地方紙では、一方的なニュース配信だけで成り立たせるのは無理がある。 そうした反省から3年前に始まったのが、新聞社が運営する地域SNSでは全国でも2番目となる「ふらっと」である。
 地元読者との双方向のコミュニケーションを行える方法を模索するうちに辿り着いたのがSNSだったというが、とはいえ「mixiではかつてのパソコン通信と同じで意味がない。 報道機関としてやる以上はオープンにしていく仕掛けが必要」との考えから独自の地域SNSを開設することとなった。 現在ではこの「ふらっと」を「地方紙を“ネット社会バージョン”にするための初期的環境」と位置づけたうえで、ここからいわゆる「シビック・ジャーナリズム」(あるいは「パブリック・ジャーナリズム」)の実現に取り組みたいとの抱負を語る(なお、名称の「ふらっと」は社内公募の末に決まったものだが「新聞社的なヒエラルキーを転換する」という意味でも佐藤自身は気にいっているそうだ)。

> 仙台・宮城・東北の地域SNS 「ふらっと」 http://flat.kahoku.co.jp/index/



■地方が自立するためのメディア 「房州わんだぁらんど」

 続いて鈴木からは、千葉県南房総地域の地域SNS「房州わんだぁらんど」についての説明が行われた。 鈴木が副理事長を務めるNPO「南房総IT推進協議会」は、過疎化・高齢化が進み、なおかつインターネット常時接続など大都市圏並みの情報通信インフラがなかなか整わない同地域の状況改善を目的としてスタート。 KDDIのバックボーン回線の主契約を行ったうえで域内市町村にリセールするようになったが、ここで得た利益を、地域発情報の主体であるNPOの活動に還元する、言うなれば「ハード運営で稼いだぶんをソフトパワーの向上に注ぎ込む」というモデルを採った。
 そうした中から生まれてきたのが「わんだぁ(南総方言で「誰だね?」の意)らんど」。 「やはり地方は『自立するためのメディアを持たなければならない』との持論を述べた。

> 南房総地域SNS 「房州わんだぁらんど」 http://wandara.net/



■横浜開港150周年を契機に改めて市民力

 今回のいわば「ホスト役」にあたる「ハマッち!」の杉浦からは、2002年に就任の中田宏市長による市民との「協働」を重視する市政運営や「横浜開港150周年」に向けた市側の強力なサポート体制が大きいとの報告が。 同時に「『他人ごと』と『自分ごと』の中間の『自分たちごと』が僕たちのニュース。 あくまで地域社会の中における『共有財』としてのニュースを市民の手で発掘し、蓄積していきたい」というメッセージも。

> 横浜地域SNS 「ハマっち!」 http://sns.yokohama150.jp/



■今なぜ地域SNSなのか

 そうした一連の報告を踏まえつつ、司会の国領からは「だったらブログでも良かったんじゃない?」という、敢えての挑発的な突っ込みが。 これに対し「今から述べる話は日経と全く関係がないが」と苦笑しながら前置きした坪田は、地域SNS台頭の背景についての次のような見解が披露された。

 「ようするに今起こっていることを一言で表わすなら 『つながりの再構築』 ではないか。 これまでの日本社会は、いわゆる“工業化社会”型の情報伝達ヒエラルヒーが地方に至るまで浸透しており、そこでは例えば地方紙や自治体などが地域における“整流器”としての機能を果たしてきた。
 ところが今やこのシステムにも限界が生じ、一方では市民の誰もが自分のメディアを持って発信できるようになった。 そうして集まってきた人々の思いを今後どのようなベクトルに持っていくかは一つの課題だが、地域SNSはその最初の回答(ステップ)ともいうべき存在ではないだろうか」
 そうしたベクトルの一つのあり方が前述の「シビック・ジャーナリズム」ということなのだろう。 ただしその場合の課題として、国領からはさらにSNSの「クローズド性」や「匿名のハンドルネーム」による発信が主流となっている現状の是非を問う質問がなされたが、これに対しては鈴木から、「それ以前の問題」を指摘する次のような回答がなされた。

 「例えば南房総では 『人口は減っているのに世帯は増えている(=高齢者の単身世帯の増加)』 という現実があるように、そもそも地域内でのコミュニケーションが今や破綻している。 こうした状況下ではそもそもフラットな形での議論や、フェアなジャーナリズムをすぐに構築することは困難だし、おそらく既存メディアがそれを担うことも困難だろう。 しかし反面、田舎でもブログで情報発信を行っている人はいるし、これからはシニア世代が大量に地域に戻ってくる。 こうした人たちをまとめる意味でも地域SNSは有効に活用できるのではないか」

 これを受ける形で杉浦からも「大事なことは、それ(SNS)を日常的に使う人たちが地域に出て行くことだ」との見解が。 さらに「いずれは 『地域SNSでなくてもよい』 という状況も来るのかもしれない」と、あくまでSNSを「目的」ではなく「道具」として地域の活動につなげていくことが肝要だという意見も示された。


■地域SNSは「多神教」のメディア

 セッションの終盤に行われた客席との質疑応答でも、やはり地域SNSのポジティブな効用よりも「問題点」や「弊害」を懸念する質問・意見が目立った。 例えば「ふらっと」について 「出てくる情報が意外に“つながって”いない」 との指摘や、坪田のいう「整流器」についても 「その役割を担ううえでの明確な“ルール”が必要ではないか」 との質問も。 また、国際大学GLOCMの公文俊平からは 「ソーシャル・ネットワーク・サービスと言った場合の 『サービス』 とは何なのか? 加入すれば何か面白いことが提供されるという意味か。 それとも自分たちで何かが発信できるということか」 との根源的な問いも。


 杉浦からは、mixiの「I love yokohama」コミュニティに既に5万人もの参加者がおり、そこから数多くのイベントが生まれてきている現状を引き合いにしつつ 「情報を発信する側も責任を持つ必要があるし、ある程度の参加者への縛りはあったほうがいい。 一方ではそういう縛りや責任が要らない場が他にたくさんあるので」 との回答。 このあたりは、各パネリストたちも概ね同じ見解だった。

 佐藤は「ふらっと」に関する先の会場からの指摘について 「おっしゃる通りで、まだ試行錯誤の段階」 としながらも 「『ふらっとブログ』には当初から禁止ワードの設定をしているが、これは未だに発動していない」 と、SNS上でユーザーたちが展開する情報流通が予想以上に健全であることを強調。

 最後に坪田は「整流器」について 「従来のマスメディアではプロのエディターが一つの紙面などの型に嵌め込む、いわば『一神教』的な作り方をしてきたが、地域SNSの場合はいわば仏教的な『多神教』型というか、ユーザー間でのコーチングを重んじる方向へと進んでいくのではないか」 と、なかなか巧みな比喩で回答。 ひいては 「今日の国領先生による司会進行の手法もその一つのあり方だ」 と上手くオチへと運び込んでいた。 確かに、それぞれのパネリストたちが独自のスタンスや意見を述べつつも、一方ではお互いを尊重しあう多神教的(?)な在り様のもとに最後まで議論がスムースに展開されたセッションだったと思う。


記事・文 岩本 太郎 + ハマっち!プレス編集部


March 10, 2008 - 管理人

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