MS-2 「地域情報化の過去・現在・未来=ニッポン活性化戦略のゴールを探る」
日本を元気にするには、地域の活力を創出することが絶対条件であると言われる。そのためには、情熱のあるリーダーの下で、様々なアイデアによって情報インフラを利活用し、眠れる地域の資源を掘り起こしていく必要がある。「不可能を可能にする知恵」を生み出すための基調講演とパネルディスカッション、ここに再現。
第2回地域SNS全国フォーラム in 横浜 2008.2.28~29 開催
==== セッション基本情報 ================================
日時:2月29日(金)10時30分~12時30分(120分間)
会場:開港記念会館講堂
基調講演・コーディネーター:
日経メディアラボ 所長 坪田 知己 氏
パネリスト:
インフォミーム(株) 代表取締役 和崎 宏氏
西千葉コミュニティサイトあみっぴぃ運営・TRYWARP代表 虎岩 雅明 氏
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■コミュニケーションが人の心を豊かにする
セッションは日経メディアラボ所長・坪田知己氏による基調講演からスタート。 まずは、パソコンと通信の可能性を強く感じ、自身パソコン通信を始めるきっかけとなった体験を披露した。 「20年前、この会場で行われたあるシンポジウムを思い出している。 パソコン通信が全盛時代のことだ。 私の盟友、会津泉が、この場所にいた。 今は早稲田大学で教鞭を取る、横浜リハビリテーションセンターの技師・畠山さんが感動的なビデオを発表した。 南九州に住む筋ジストロフィーの患者の映像だ。 顔と口は動かせるが、体は動かない。 しかし、口にストローをくわえ、パソコン通信を介し、色々な友達とやり取りをしている。 1、2年しか生きられないと言われていた彼は、外の世界とのコミュニケーションの楽しみを知り、それから6年生きることができたという。『体は鎖につながれているけれど、心は世界に開かれている』、彼の詩だ。コミュニケーションが人の心を豊かにする、その素晴らしさを実感した」
その後、AOL日本法人の立ち上げを始め、日本経済新聞社で、新しい通信とコミュニケーションの世界を拓く仕事に取り組み続ける。 2003年には、慶應義塾大学の國領二郎教授に声をかけ「日経地域情報化大賞」を創設する。 「社内には反対もあった。将来どうなるんだろう?駄目だったら2~3年でやめよう」と始めたプロジェクトは、総務省などの取り組みと相まって、次第に大きな広がりと重みを持つものとなっていく。
「本日の講演は、この地域情報化大賞をベースとしたものになる」。
日経地域情報化大賞2007
書籍:國領二郎、飯盛義徳「『元気村』はこう創る―実践・地域情報化戦略」(日本経済新聞社)
■なぜ今、地域情報化なのか?
では、なぜ今「地域情報化」が重要なのか? 坪田氏は、戦後の日本の経済社会の発展の文脈を辿りながら、その必然性を説く。「焼け野原の状態から、産業が復興していった。最初は繊維、造船、鉄…やがて、自動車、家電産業と基幹となる産業は移り変わっていった」産業が発展し、経済大国日本が出来ていった。
昭和30~40年代の高度経済成長時代、農山村から都市への人口移動が起こった。「人々は地域共同体というコミュニティから出て、都会のアソシエーションへ向かい、そこで、タコツボの都市生活者となった。 都市には本当の意味でのコミュニティはできなかった。できたのは、利益共同体という企業倫理の中での寂しいコミュニティだけだった。 一方で、人が出ていった田舎も寂しいところになっていった」
田舎の人間を都会が吸い上げていく一方で、田舎が都会から吸い上げていく仕組みは誰も仕掛けることができなかった。 「日本を全体としてみた時のデザインを、誰も描けなかった。 農山村は疲弊し、中国をはじめ海外から様々なものが入ってくるようになった。 海外で戦争などが起こり、その流れがストップしたらどうなるのか? 日本はあっという間に餓死する国になってしまった」 「元に戻そうとは言わないが、健全な国にしたい」
「バブル崩壊の後、インターネットの波が押し寄せた。 情報技術は日々進化している。 団塊世代の大量退職時代がやってきた。 能力を持った豊かなシニア層が、動き出そうとしている」ICTを利活用し、シニアSOHOや市民塾を立ち上げ広げる動きが活発化している。
■ソーシャルキャピタルとインターネット
これからの社会を考えるキーワードの1つが「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」である。 社会関係資本が蓄積されていない都市は犯罪率が高いという調査結果がある。
「人々の協調行動を活発することによって社会の効率性を改善できるのが、信頼、規範、ネットワークを基盤とした社会組織の特徴」 「分断社会からつながりの経済社会の構築へと向かう必要がある。 アルビン・トフラーは『富の未来』で、富はお金、物質ではない。 変えられないものの大切さを説いた。そういう流れを地域の中でもう一度作っていかなければならない」と続ける。
人間関係について、社会学者は2つの類型を示している。「1つは結合型。 強い連結により強力な協調ができるが、排他的・閉鎖的になるのが難点。もう1つが橋渡し型。 弱い連結であり、ボランティア的で出入り自由。 開放的だが強い強調にはならない」と説明する。
「mixiにおいて、人々は日記を書き、テーマワールドではテーマごとにあるコミュニティの一員になり、友達を作っていく」。 インターネット抜きにそういった友達関係を作ることはできるのだろうか? 「データベースを介在させ、マッチングを実現するのがインターネットの役割。 インターネットで起こっているのは、たった1つのこと、マッチングだ。 amazon.comは、書籍のデータベースと自分の読みたいものを結びつける。 SNSは、同じ興味・関心を持つ人と人を結びつける」
・書籍:宮田加久子「きずなをつなぐメディア―ネット時代の社会関係資本」(NTT出版)
■地域を元気に!~日経地域情報化大賞の事例紹介
次に、坪田氏は地域のEmpowermentに関する具体的な事例を「インフラ整備/産業の活性化/生活の情報化」の3つに分類し紹介した。 いずれも「日経地域情報化大賞」で賞を受けた、熱意と工夫に満ちた事例である。 インフラ整備に関しては「関西ブロードバンド(大阪)」「みあこネット(京都)」「にんじんネット(長崎)」「長野県協同電算」など、産業の活性化では「鹿児島建築市場」「からり(愛媛)」「いろどり(徳島)」など、生活の情報化に関しては「南房総のネットデイ(千葉)」「インターネット市民塾(富山)」「鳳雛塾(佐賀)」「村ぶろ(和歌山)」などが紹介された。
基調講演の最後に、坪田氏はパネルディスカッションにむけ、こう投げかけた。 「では、地域SNSは何を目指すのか?単なる井戸端会議なのか?何か地域の問題解決に役立つのか?コミュニティの再構築とは?ムーブメントのベクトルは?」
■パネリストたちの横顔
パネリストは2名。 TRYWARP代表で西千葉コミュニティサイト「あみっぴぃ」を運営する虎岩雅明氏と、インフォミーム(株) 代表取締役で地域SNS「ひょこむ」を運営する和崎宏氏である。 まずはそれぞれが簡単に自己紹介を行った。
「就職せずに生きていくにはどうすればいいか?と考えた時、自分の地域を良くしたらそれが可能だと思った」と起業の動機を語る虎岩氏。 大学生が地域住民にパソコンを教えることが、若者と地域間交流のきっかけとなり、地域の活性化につながっている。 現在、2000人以上の会員が登録している地域通貨取引機能も備えたSNS「あみっぴぃ」の立ち上げも、パソコン講習が起点となっている。 「講習後のサポートツールとしての役割が大きかった。 コミュニケーションツールとしてパソコンを使うと、自然とパソコンが使えるようになる」だが、インターネット上の社会というと若者に大人が合わせる感覚がある。 「教室の受講生にmixiを進めても、違和感を感じてしまう。 ならば、リアルな西千葉そのものの高齢化社会をそこに実現しよう」それが「あみっぴぃ」である。 リアルな社会が再現されているかどうか?場づくり、場の維持には常に関心を払っている。
最近は県と共同で、市民の手により地域の全ての店舗を調べ掲載する「I love 西千葉プロジェクト」も行った。
和崎氏は、SNS基盤「OpenSNP」の開発者であり、SNS「ひょこむ」を運営している。 「WEB2.0は永遠のβ版。 他人が作るソフトに手をつけるのはなかなか難しい。 ならば地域活動を支援するオリジナルツールを作ろうと始めた」ときっかけを語る。 「SNSの動きの中に従来日本にあった地域ネットワークの仕組みを刷り込むことはできないか? 設計面でも運用面でもそれを考えている」と言う。 「リアル社会のブリッジ役は割にあわないことが多いため短命である。 SNSのパーソナルネットワーク、ソーシャルネットワーク機能はそれを可能にし、バーチャルからリアルが生まれてくる。 地域全体の雰囲気づくりができるツールだ」
すでにいくつかのアイデアが現実の世界で具現化している。 SNS上でデザインを募り生まれた「ひょこむカー」や、姫路名物のおでんを使った「姫路おでんコロッケ」だ。 「言い出した本人もやらなくちゃ!という意識を持ち、形になっていく。 つながりの再構築が行われている」。 新しいもの生む基盤となるのが、普段の井戸端会議的コミュニケーションだ。
「普段からやり取りしているからこそ、投げ込まれた時にバーチャルな世界からリアルなものが生まれる。 それが人をつなぐ原動力になる。 つながりが喜びに変わっていく」「アメリカで爆発的な盛り上がりを見せたネットデイは日本ではそこまでの力を持たなかった。 SNSはネットデイ2.0だと思っている。 1年前にはここまで深まり、広がるとは思ってもみなかった」
・西千葉コミュニティサイト 『あみっぴぃ』
・兵庫地域SNS 『ひょこむ』
■人のつながりの価値
ここで坪田氏が「虎岩さんはパソコン教室から始めた。 SNSの立ち上げや運用は想定内か、想定外か?」と質問すると、虎岩氏はこう答えた。 「我々の場合、どう盛り上げるかではなく、初めから地域が盛り上がっていた。 パソコンを教えると生徒はブログを書く。 地域イベントがあるとブログにコメントがつく。 そのうちブログでは不便だ、となって教室のサポートツールとしてSNSを作った。 パソコン教室と商店街と地域イベント…そういったリアルな盛り上がりの循環がネットにも溢れ出た」「世代を超えた、というのが大きかったと思う。 学生の中には地域に興味のない人も多い。 だが、パソコン教室のバイトする?というと手を挙げる。すると教室のサポートツールの『あみっぴぃ』を使う。そうして地域に関わるようになる。SNSが鍵になった、という意味では想定外かもしれない」
それを受け坪田氏が言う。
「虎岩さんの話は非常に象徴的だ。 私の原点は、パソコンのプログラミング。 情報社会は来るんだろうな、と思いながらトフラーを読んでいた。 今、世の中には携帯小説が溢れる。 魔法のiらんどに投稿し流通する、そんなプロシューマーのルートができた。 インターネットの上に魔法の扉が開かれた」
「コンシューマー時代は、大量生産をし、顔の見えない人たちを抱き込み配布するための手法が主流だった。 しかし我々は顔も心も持っている。不特定多数を相手にするメディアはもうダメだ。 『あなたに、私の、この情報を、差し上げます』 そんなふうに大事に情報を渡す、ということがとても大切になっている」
「資本主義は競争社会。 社会が大きくなっていく過程で、人のつながりはズタズタにされた。 局面において競争は大切だが、行きすぎると互いの足をひっぱりあうだけの社会となり、心は荒む。 インターネットによって自分たちが自然にできることができる、というのが実現できたことをいいなと思う」
和崎氏は
「その通りだと思う。 今若い人の間で『三丁目の夕日』が流行っている。 私が生まれた頃の話にノスタルジーを感じると言う。 日本人は捨てたものじゃないな、と思う。 人のつながりって、幸せなもの、満たされるもの、それを若い人が持っていてくれる」
「阪神大震災の時、避難所で着のみ着のままの人が支え合い、命をつないだ。 本当に必要なものは何なのか?目の前にそれが見えた」
■縦のつながり、横のつながり
続いて質疑応答セッション。 東北大学の伊藤氏が「SNSは、団塊世代の男がゴミと化さないための道具ではないのか?」と問いかけた。「女たちは井戸端会議をしている。メールは使っているが、近所の人の名前も知らない。家庭のゴミになるのではないか?と不安に駆られている。 地域SNSはビジネスの活性化にも使えるが、団塊世代に知的好奇心を与えながら市民に役立つ力を引き出すツールとならないか?と考えている。何か具体例はないか?」
それに対し「SNSが団塊世代を救えるかどうかはわからないが、若者にうんちくを話せる場面としてはいいのでは?」と虎岩氏。
坪田氏は「慶應にはメンター三田会という存在がある。 企業で活躍後退職された方々が、慶應の学生の面倒を見る、会社を始める若者にアドバイスを行う。 とてもいい制度だと思う」
「SNSは横につながることができるのがいい。 社会では、縦につながることが健全とされる。 人間は文化遺伝子(ミーム)を持っていて、世代間交流とは文化遺伝子の受け渡しに他ならない。 これがどんどん、様々なチャネルで広がる。団塊の世代の問題もその点から考えてみることができる」
「NPOは『三ちゃん事業』だ。 そういう世代の人が活躍することが社会にとっては大切で、新しい時代をつくるひとつのトリガーとなる」と言う。![]()
■「分断社会」から互いを認め合う「つながりの社会」へ
坪田氏は言う。
「ブログの初めての書きこみに対し、コメントがつく。 物凄く嬉しいことだ。 心同士がつながっていく、心を知ることから地域情報化は始まる。 工業社会にはブロック塀がある。 優秀であることが重要だ。 我々はそんな分断社会の中でお互いを知りあう」
「今の世の中では、個性が大切。 日本で一番素晴らしい生垣を作る集団は、自然石を見事に組み合わせ、石垣を作る。 一つ一つの石の個性を知り、それをうまく組み合わせ伝える。この考え方を人事や組織の中に活かさなければいけない」
「我々には個性がある。 それこそが存在の理由だ。 お金を稼ぐことはある程度できる。 そこから先、大切なのは誰かが認めてくれること、何かを認められること。 その充実感を感じる」
「それをいかに豊かにつなげていくか?この地域、社会をどうするかを考えるとは、そういうことではないだろうか?」
虎岩氏は地域SNSの運営者にあえて警鐘を鳴らす。
「SNSの活性化が大事なのではない。 本質を見失わないでほしい。 SNSはいわば携帯電話。 友達がいないのに電話を持っていても、着信音は鳴らない。 盛り上がっていない地域にSNSを入れると、ますます寂しく、寂れた感じがでる。 盛り上がっている地域に入れると、もっと盛り上がる」
「地域情報化というのはある程度まで進んでいると思う。 トライワープでは、そうではなくITの地域化を考えている」
「団塊の世代の議論について。 団塊の世代は嫌われることを恐れないでほしい。 若者を育てるために嫌われることも言ってほしい。 若者は嫌われることで、反骨精神が生まれる」
和崎氏は
「情報は受けるだけ、という人も地域の中にはいる。 それでもいいのでは?と思う。 インターフェースを通じ、その情報が広がり深まっていく。 例えば、カーナビと地上波デジタルと地域SNSの連携の実験が行われている。 その地域に、そのポイントに、その人を案内する。 情報できっかけづくりをする」
「地域SNSはこうだ!ではなく、人脈のプラットフォームにどんなものを載せたらいいか?を考えたい。 緩やかなつながりの中に、私たちの生活環境があったらいいと思う」
最後に、坪田氏はこう結んだ。
「情報化が目的ではない。 その先にある世の中を良くしていくために、道具は使うものだ。 特産物、歴史、風景…地域の資源というとそういうったものが挙がる。 でもそんなものはどうでもよく、その地域の人の、情熱、思い、能力こそが、その地域の最大の資源だ」
「つながりを可視化することが大切だ。 自分をネットワークの中で可視化し、自分を知る中で相手を知る。 個性を知る中で地域は始まる」
「井戸端会議でいいのか?という議論がある。 井戸端会議がベースにあるから、そこから先に進む原動力が生まれるのだ。自分がやろうとしていること、やらなければいけないことがわかるのだ」
「カリスマリーダーについていくのではなく、アドホックに色々なことができる、そんな地域を作ってほしいと思う」
記事・文 とも + ハマっち!プレス編集部
March 2, 2008 - 管理人















